分配関数で状態方程式を導く【統計力学】【演習】

体積\(V\)の空間に閉じ込められた質量\(m\)の自由粒子が\(N\)個ある.これらの粒子はすべて同じ種類であるとする.

問1 各粒子の運動量を\(\vec{p_i} = (p_{ix}, p_{iy}, p_{iz}) \quad(i=1, 2, \cdots N)\)としたとき,ハミルトニアンを書いてください.ただし粒子間に相互作用は働いていないとします.

問2 問1で求めたハミルトニアンから分配関数を求めてください.ただし逆温度\(\beta = 1/k_B T\)とします.

問3 ヘルムホルツの自由エネルギー,エントロピー,内部エネルギーを求めてください.ただしスターリングの公式\(\text{log}N! \simeq N\text{log}N – N\)を用いてください.

問4 問3で求めた物理量を用いることで理想気体の状態方程式を導いてください.

問1

  • ハミルトニアンはエネルギーの和
  • エネルギーは運動エネルギー+相互作用+外場

ということで,今回登場するすべての粒子のエネルギーを考えればよいですね.
各粒子はそれぞれ\(\vec{p_i}\)という運動量を持っているので,運動エネルギーは

\[\frac{\vec{p_i}^2}{2m}\]

と書けますね.今回は相互作用のない自由粒子を考えているので,エネルギーは運動エネルギーだけで全部です.よってこれをすべての粒子分足し算すればよいので,ハミルトニアンを\(H\)とすると,

\[H = \sum_{i = 1}^N \frac{\vec{p_i}^2}{2m} ・・・(答え)\]

となります.

問2

  • 分配関数は\(e^{-\beta H}\)の積分 or 和
    • \(H\)のパラメータが連続的 ➡ 相空間上の積分
    • \(H\)のパラメータが離散的 ➡ 和
  • 独立に計算するチャンスをさがす
  • 古典計算では相空間の微小体積\(h^3\)とギブズ因子\(\frac{1}{N!}\)を忘れずに

今回ハミルトニアンのパラメータは\(\vec{p_i}\)です.\(x成分もy成分もz成分も-\inftyから\infty\)までとる連続パラメータですので,分配関数の計算は積分です.

分配関数を\(Z\)と置きましょう.まず積分するにあたって動く変数は各粒子の運動量の各成分ですね.座標をまとめて\(x,y,zを\alpha\)とおいてまとめて書くと,

\[H = \sum_{\alpha = x,\ y,\ z}\sum_{i = 1}^N \frac{p_{i\alpha}^2}{2m}\]

よって\(-\inftyから\infty\)まで動く連続パラメータ\(p_{i\alpha}\)の\(3N\)個分の和が今回のハミルトニアンです.ここで分配関数を\(Z\)と置きます.見た目を簡潔にするため,ギブズ因子と相空間の微小体積を省くと,

\[Z = \int e^{-\beta H} d\Gamma\]

\[\begin{align*}
d\Gamma &= (各粒子の座標が微小変化したときの体積)(各粒子の運動量が微小変化したときの体積)\\
&= dx_1 dy_1 dz_1\cdots dx_N dy_N dz_N \ dp_{1x}dp_{1y}dp_{1z} \cdots dp_{Nx}dp_{Ny}dp_{Nz}
\end{align*}\]

と書くことができます.では積分範囲を明示的に書き直しましょう.

  • 各粒子は体積\(V\)に閉じ込められているので\[\int dx_i dy_i dz_i = V\quad (i = 1, 2, \cdots, N)\]
  • 運動量の各成分は\(-\infty から\infty\)のすべての値をとりうるので\[\int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} dp_{ix} dy_{iy} dz_{iz}\quad (i = 1, 2, \cdots, N)\]

となりますね.ここで

\[e^{-\beta H} = \prod_{\alpha = x,\ y,\ z} \prod_{i = 1}^N e^{-\beta\frac{p_{i\alpha}^2}{2m}}\]

であって各\(p_{i\alpha}\)は独立なので,積分も個別にできます.するとすべて同じ形のガウス積分

\[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-\beta\frac{p_{i\alpha}^2}{2m}} dp_{i\alpha}=
\sqrt{\frac{2m\pi}{\beta}} \]

となります.よって運動量に関する積分はこれの\(3N\)乗です.

座標に関する積分もすべて\(V\)であり,それが\(N\)粒子かかってきます.

よってギブズ因子\(\frac{1}{N!}\)と相空間の微小体積\((h^3)^N\)を含めて,

\[Z = \frac{V^N}{N!}(\frac{2\pi m}{h^2 \beta})^{3N/2}・・・(答え)\]

問3

  • \(F = -k_B T \text{log}Z\)
  • \(S = – \frac{\partial F}{\partial T}_{N, V = \text{const.}}\)
  • \(E = F + TS\)

エントロピーを求める際に温度微分がありますし,問4では状態方程式を見たいので,逆温度ではなく温度\(T\)を用いた方が少しだけ見やすくなると思います.

\begin{align*}
F &= – k_B T \text{log}Z \\
&= – k_B T (- \text{log}N! + N\text{log}(V(\frac{2\pi m}{h^2 \beta})^{3/2})) \\
&\simeq – k_B T (- N \text{log}N + N + N\text{log}(V(\frac{2\pi m}{h^2 \beta})^{3/2})) \\
&= – N k_B T \left(1 + \text{log}\left(\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi m k_B T}{h^2}\right)^{3/2}\right)\right)・・・(答え)
\end{align*}

\(F\)が求まりましたので,積の微分公式を用いて計算します.

\begin{align*}
S &= \frac{\partial}{\partial T} N k_B T \left(1 + \text{log}\left(\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi m k_B T}{h^2}\right)^{3/2}\right)\right) \\
&= N k_B \left(1 + \text{log}\left(\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi m k_B T}{h^2}\right)^{3/2}\right)\right) + N k_B T \frac{3}{2T} \\
&= N k_B \left(\frac{5}{2} + \text{log}\left(\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi m k_B T}{h^2}\right)^{3/2}\right)\right)・・・(答え)
\end{align*}

\begin{align*}
E = F + TS = \frac{3}{2}N k_B T・・・(答え)
\end{align*}

問4

  • \(P = – \frac{\partial F}{\partial V}_{T, N = const.}\)

\begin{align*}
P &= – \frac{\partial F}{\partial V}\\
&= \frac{\partial}{\partial V}N k_B T \left(1 + \text{log}\left(\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi m k_B T}{h^2}\right)^{3/2}\right)\right)\\
&= N k_B T \frac{1}{V}
\end{align*}

となって理想気体の状態方程式\(PV = N k_B T\)を得ることができます.////

自由粒子のハミルトニアンは運動量に関する積分のみでしたのでガウス積分を用いて簡単に求めることができました.

分配関数が求まれば,エネルギーを計算することができますので,各種熱力学量も求めることができます.分配関数って便利ですね.

ぶつぶつり
ぶつぶつり

最後まで読んでくださいましてありがとうございました

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