👆こちらの記事で正方行列がいつでも三角化できることを書きました.
では対角化はどうでしょうか.
いつでもはできないですよね.残念でなりません.
ただ正規行列という特定のグループに属する行列たちはいつでも対角化できます.うれしいです.
1.正規行列
正規行列の定義を確認しましょう.
行列に対するエルミート共役という操作を思い出しておきます.
行列\(M\)のエルミート共役\(M^*\)は\(M^* = \bar{M}^T\)です.
\(\bar{M}\)は行列の各成分を複素共役とった行列.\(M^T\)は転置した行列です.
このエルミート共役をもって正規行列は以下のように定義されます.
正規行列
行列\(M\)が正規行列であるとは,\[MM^* = M^* M\]が成立することである.
こんな感じです.
つまり正規行列というのは,複素共役とってから転置した行列ともとの行列が可換であるというのが定義ですね.
例えば
- エルミート行列
➡ エルミート行列\(H\)は\(H^* = H\)を満たすから可換 - 対角行列
➡ 対角行列はエルミート共役をとっても対角行列で対角行列どうしがそもそも可換
とかは正規行列です.
ということで正規行列はいつでも対角化できることを見ていきます.
2.正規行列はユニタリ対角化可能
それでは\(M\)が正規行列であるとしましょう.サイズは\(n\times n\)であるとしておきます.
まずユニタリ行列で上三角化できることがわかってます.
なのでします.上三角化の変換に用いる行列を\(U\)として,\[U^* MU = A\]とできます.\(A\)は上三角行列です.
では\(M\)が正規行列であることを用いると,以下のような式変形で\(A\)も正規行列になっていることが分かります.
\begin{align*}
AA^* &= U^* M U (U^* M U)^* \\
&= U^* M \underset{ユニタリ!}{\underline{U U^*}} M^* U \\
&= U^* \underset{可換!}{\underline{M M^*}} U \\
&= U^* M^* M U \\
&= U^* M^* U U^* M U \\
&= A^* A \cdots (*)
\end{align*}
それでは\(AA^*\)と\(A^*A\)の対角成分を比べてみましょう.
\(A\)は上三角なので\(i>j\)では\(A_{ij}=0\)であることがとても重要です.
まず\(AA^*\)の対角成分から見ていきます.比較するのは\((i,i)\)成分\((i=1,\cdots,n)\)にします.
\begin{align*}
(AA^*)_{ii} &= \sum_{j=1}^n A_{ij} (A^*)_{ji} \\
&= \sum_{j=1}^n A_{ij} \underset{転置!}{\bar{A_{ij}}} \\
&= \underset{i>jでA_{ij}=0}{\underline{\sum_{j=i}^n}} A_{ij} \bar{A_{ij}} \\
&= \sum_{j=i}^n |A_{ij}|^2 \\
\end{align*}
では\(A^*A\)の対角成分はどうでしょう.
\begin{align*}
(A^*A)_{ii} &= \sum_{j=1}^n (A^*)_{ij} A_{ji} \\
&= \sum_{j=1}^n \underset{転置!}{\bar{A_{ji}}} A_{ji} \\
&= \underset{j>iでA_{ji}=0}{\underline{\sum_{j=1}^i}} \bar{A_{ji}} A_{ji} \\
&= \sum_{j=1}^i |A_{ji}|^2 \\
\end{align*}
よって
\[\sum_{j=i}^n |A_{ij}|^2 = \sum_{j=1}^i |A_{ji}|^2 \cdots (**)\]
となりますね.
この式を\(i=1\)についてみてみると,\[\sum_{j=1}^n |A_{1j}|^2 = \sum_{j=1}^1 |A_{j1}|^2 = |A_{11}|^2\]となってますね.\(|A_{11}|^2\)は両辺共通なので,それだけキャンセルすると,
\[\sum_{j=2}^n |A_{1j}|^2 = 0\]
絶対値は非負ですので\(A_{1j}=0\ (j \neq 1)\)ということがわかりました.
この流れで帰納法が回ります.
式(**)にで\(i \leq k\)において\(A_{kj}=0\ (j \neq k)\)を仮定すると,\(i=k+1\)では
\[\sum_{j=k+1}^n |A_{k+1\ j}|^2 = \sum_{j=1}^{k+1} |A_{j\ k+1}|^2 = |A_{k+1\ k+1}|^2\]
よって
\[\sum_{j=k+2}^n |A_{k+1\ j}|^2 = 0\]
となって\(A_{k+1\ j}=0\ (j \geq k+1)\)が導けます.加えてそもそも\(A\)は上三角でしたから,\[A_{k+1\ j}=0\ (j \neq k+1)\]となって帰納的に\(A\)は対角成分以外が\(0\)であることが導けました.
よって\(U^* MU = A\)は対角行列であることが分かりました.無事証明完了です.
3.逆にユニタリ対角化可能なら正規行列
さきほどの式変形(*)と似たような計算でユニタリ対角化可能な行列が正規行列であることが言えます.
\(M\)がユニタリ対角化可能であるとします.つまり\[U^* MU = A\]で\(A\)は対角行列です.
対角行列のエルミート共役は対角行列です.対角行列どうしの積はそもそも可換です.
よって対角行列\(A\)は正規行列で\[AA^* = A^* A\]を満たします.
ではこれを用いていきましょう.
\begin{align*}
AA^* &= U^* M U U^* M^* U = U^* M M^* U\\
A^* A &= U^* M^* U U^* M U = U^* M^* M U
\end{align*}
よって\[U^* M M^* U = U^* M^* M U \]ですね.この式に左から\(U\)を,右から\(U^*\)をかけてあげれば,\[M M^* = M^* M\]となって\(M\)が正規行列であることがわかります.
まとめますと,
ユニタリ対角化可能 ⇔ 正規行列
ということでした.

最後までありがとうございました
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