運動方程式から保存則を導く【力学の初歩】

力学の初歩

ニュートンの第二法則である運動方程式

\[m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} = \boldsymbol{F}\]

これさえ適切に立式できれば、運動を解析することができます

一方運動を解析する別の手段として、様々な保存則があります

今回はこの運動方程式から保存則を導きたいと思います

ただし当然のようで少し変な仮定と思われるかもしれませんが考える質点の質量 \(m\) は時間変化せず一定とします

1.運動量保存則を導く

まずは運動量保存則を導いてみます

さて加速度とは速度の時間微分なので

\[ \boldsymbol{a}= \frac{d \boldsymbol v}{dt} \]

とかけますから実は運動方程式は、運動量 \(\boldsymbol{p} = m\boldsymbol{v}\) の時間変化が \(\boldsymbol{F}\) に等しいことを述べている式で

\[ \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} = \boldsymbol{F}\]

と書き換えることができます

よってこの式を時刻 \(t = 0\) から \(t = t\) まで積分すれば

\[ \begin{eqnarray} \int^t_0 \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} dt &=& \int^t_0 \boldsymbol{F}dt \\ \\ \boldsymbol{p} (t) \: -\: \boldsymbol{p} (0) &=& \int^t_0 \boldsymbol{F}dt \end{eqnarray}\]

ここで外力 \(\boldsymbol{F} = 0\) という条件のもと、運動量保存則

\[ \boldsymbol{p}(t) = \boldsymbol{p}(0) \qquad \forall t\]

が成立します

2.エネルギー保存則を導く

次にエネルギー保存則を導きます

運動量保存則を導いたとき同様、積分するのですが少しテクニックが必要です

運動方程式の両辺で \(\boldsymbol{v}\) との内積を取ってから積分をしましょう

これは有名な手法で、そのままのネーミングですがエネルギー積分と呼ばれることもあるそうです

これが有効な理由は

\[m\boldsymbol{v}\cdot\frac{d \boldsymbol{v} }{dt} = \frac{d}{dt} \left\lbrack \frac{1}{2}mv^2\right\rbrack \]

となるので

\[\begin{eqnarray} \int^t_0 m\boldsymbol{v}\cdot\frac{d \boldsymbol{v} }{dt} dt &=& \int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v}dt \\ \\ \int^t_0 \frac{d}{dt} \left\lbrack \frac{1}{2}mv^2\right\rbrack dt &=& \int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v} dt \\ \\ \frac{1}{2}mv^2 (t) \: – \: \frac{1}{2}mv^2 (0) &=& \int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v} dt \end{eqnarray} \]

右辺に注目すると、 \[\int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v}dt = \int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot\frac{d\boldsymbol{r} }{dt}dt = \int^t_0 \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r}\] は仕事なので、仕事が0のときにエネルギー保存則

\[ \frac{1}{2}mv^2 (t) = \frac{1}{2}mv^2 (0) \qquad \forall t\]

が成立します

3.角運動量保存則を導く

運動方程式から角運動量保存則を導くにあたり、外積を用います

外積についても

\[\frac{d}{dt} \left\lbrack \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} \right\rbrack = \frac{d \boldsymbol{A} }{dt} \times \boldsymbol{B} + \boldsymbol{A} \times \frac{d \boldsymbol{B} }{dt} \]

というように積の微分が成立します、証明は成分ごとに一変数の積の微分の証明を行うだけです

さてこれを用いると角運動量 \(\boldsymbol{L} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p}\) の時間微分は

\[\begin{eqnarray} \frac{d}{dt} \left\lbrack \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} \right\rbrack &=& \frac{d \boldsymbol{r} }{dt} \times \boldsymbol{p} + \boldsymbol{r} \times \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} \\ &=& \boldsymbol{v} \times m\boldsymbol{v} + \boldsymbol{r} \times \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} \\ &=& \boldsymbol{r} \times \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} \end{eqnarray}\]

となります、この式を用いて運動方程式の辺々に \(\boldsymbol{r}\) と外積をとって変形すると

\[\begin{eqnarray} \boldsymbol{r} \times \frac{d \boldsymbol{p} }{dt} &=& \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} \\ \\ \frac{d}{dt} \left\lbrack \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} \right\rbrack &=& \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} \end{eqnarray} \]

となり力のモーメント \(\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F}\) が0のとき、角運動量保存則

\[\frac{d}{dt} \left\lbrack \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} \right\rbrack\ = \frac{d \boldsymbol{L}}{dt} = 0 \]

が成立します

4.まとめ

やはり運動方程式は偉大でした

そもそも古典力学の原理から保存則が導けるのは当たり前のことなのですが

保存則が案外カンタンに導くことができると分かってよかったです

最後まで読んでくださいましてありがとうございました

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